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Part4







※WEB拍手内に掲載していたSSです。
 基本的に書き散らしたモノばかりですので、さらりと読み流す程度が理想です。



1/Fateな学園生活 第一話〜アーチャーとランサーは仲が悪い〜

「おばちゃーん、これとこれとくれよ」

 昼休み。
 ほとんどの生徒が心待ちにする昼食の時間である。この学園には食堂もあるが、彼──ランサーは今日は売店な気分だったので王道的なアンパンと牛乳を選んで会計に進んだ。

「売り子してる私が言うのもなんだけどねぇ、若いんだからもっと栄養のあるもの食べたらどうだい? ほら、アンタ見た目はいいんだし、ちょいちょいと女の子で掴まれてさ、一緒に弁当食べるとか」

「うんー? つってもなぁ、メシの作れる女の知り合いってーと……」

 バゼット──却下。卵すら割れそうにない。
 カレン──却下。どうせマーボー。
 凛──却下。何を要求されるかわかったもんじゃない。
 セイバー──却下。食う専門。
 ライダー──却下。何が出てくるかわかったもんじゃない。
 キャスター──却下。イチャイチャしてろ。

「ダメだ。ろくでもねぇ知り合いしかいねぇ。主夫根性のあるヤツなら二人ほど知ってはいるが、かたっぽは食えっつわれても絶対イヤだね」

「ふむ。それはいったい誰のことかな、ランサー」

「あ? なんでこんなトコにテメエがいんだよ」

 アーチャーだった。普段は弁当を持参するこの男が売店に足を運ぶことは珍しい。

「なに、また凛が色々とやらかしてな。その後始末をさせられ、弁当を作る時間などなかっただけの話だ。私はこれとこれを貰おう」

 差し出したのはウグイスパンとお茶だった。

「ゲッ、パンに茶かよ」

「私が何を飲もうが君に関係なかろう。それよりも邪魔だ、さっさと会計を済ませそこをどけ」

「あぁ……? テメエケンカ売ってんのか」

「フン、売っているつもりはないが買う気があるのなら売ってやろう。この場なら、勝負の方法に困ることもない」

 両者の間で鬩ぎ合うピリピリとした空気。交錯した視線は火花を散らし、開幕の合図となる。

「いいぜ。もちろん、負けた方は全額おごりだよな?」

「無論だ。それに加えて先一週間分の昼食費負担というのはどうだ」

「ああ、構わねえ。そんな条件を出したことを後悔させてやるぜ」

 人智を超えた戦いが、始まった。

 テーブルの上に山と盛られた数々のパン。勝敗の決し方はいとも簡単。より多くのパンをその腹に収めた方が勝ちである。
 途中での飲料の摂取はもちろん可。しかしその分食べられる量が減るので、飲まずに食べ続けるのはランサーだ。対するアーチャーは的確に飲み物で喉を潤し、固いパンなどは水分を含ませ食べやすくして食べ続けていた。

 両者の戦法は、その本質を現している。
 ランサーをして戦上手と言わしめるアーチャーの戦術はその戦い方に酷似する。ランサーの詰め込むだけなどという粗野な戦法は美しくない。勝つならば鮮やかに。食べ方にとて気を使う。凛の洗脳は順調だった。
 かっ込むだけのランサーではあるが、その身は最速のサーヴァント。何も速いのは脚や槍捌きだけではない。何よりも、この男に敗北することだけは、ランサーのプライドが許さない。

 そんな両者の戦いを観戦する多くのギャラリー。

「いけー、ランサー! そのまま食い続けろ!」
「頑張ってアーチャーさん! ランサーなんかに負けんなよー!」

 声援は、打算に塗れていた。

「さあさあ、張った張った! どっちが勝つか一口500円から! 現在のオッズは青豹ことランサー有利か────!?」

 その場所に、彼女が現れた。
 ドン、と叩きつけられる一万円札。沸き起こる観客の声。

「────アーチャーに一万円」

「おおーっと、ここで遠坂嬢がアーチャーに賭けたーーーー! しかも一万円!? これは余程自信ありなのかー!?」

 フフ、と不敵な笑みを零す凛。
 食べ続けながら、アーチャーは凛へと視線を傾ける。その視線が語る。

 “────凛、君はまさか……”

「その通りよアーチャー! 令呪に命じる! アーチャー! この勝負に勝ちなさい!!」

 “バッ、このような事に令呪を使うなど君はバカか──!?”

 赤き輝きと共に、アーチャーの食べる速度が加速する。咀嚼するスピードは既に目視できず、山と積まれたパンが見る見るうちに減っていく。

「はん、こんなこと!? 一万円よ一万円! アンタもし負けでもしたら死刑なんだから!」

 “横暴な……!”

 アーチャーの思いなど知らず、身体は勝手にパンを食べ続ける。このままいけば、アーチャーの勝利は固いと誰もが歓喜と落胆に心を占められた時────

「ふう、大河にも困ったものだ。昼食前の私にプリントを職員室まで運ばせるなど。更にはその隙にシロウが私の為に用意しておいてくれた弁当にまで手を付けるなど。どうやら帰ったらお仕置きが必要なようです。仕方ありません、今日の昼食は売店で────」

 その少女が現れた。

「ぐあっふ、もぐっ、がふっ、ぷふぁ(キッタネエぞテメェ! 令呪の力を借りるなんざそれでもキサマ英雄か! 男なら正々堂々戦いやがれ!)」

「フン、ふぉあまあだもおあだにあぱ(ふん、文句なら凛に言え。私の意志ではない。それにな、勝負に卑怯も何もあるまい? 勝利以外に意味はない)」

 二人の言葉にさえなっていない罵り合いはしかし、手が休まるヒマすらなく続けられる。決着はまもなくだ。凛の介入によりブーストのかかったアーチャーには、たとえランサーといえどここからの巻き返しは難しい。
 そんな、クライマックスの差し迫った戦いの場へ、海を割るモーゼの如く現れたのは最優のサーヴァント・セイバーであった。

「「ふぇイバー?(セイバー?)」」

 二人の声がはもるが、セイバーには届かない。
 俯き前髪に隠された瞳の奥には、隠しきれない憤怒の炎が巻き起こっている。その身体より立ち上る怒気が、生徒の海を割り裂いたのだ。

 ドン! と床に突き立てられる輝ける星の聖剣。
 黄金の輝きは、消せない光を宿し、担い手の心を代弁するかのような鋭さを湛え続ける。

「食堂(ここ)はみなで食事を楽しむ場だ。これらは断じて貴様らの為だけに用意された食事ではない」

「ふぇ、ふぇい──(せ、セイ──)」

 振り上げられた聖剣。
 ギャラリーは既に、いつの間にか消え失せていた。

「私の昼食を全部食すとは────何事ですかーーーーーーーーーーーーーー!!」

「「結局それかセイバァァァァァァァァァァ!!」」

 白色に染め上げられた食堂には、ピクピクと痙攣するランサーとアーチャーだけが残された。
 セイバーはといえば、泣きながら士郎に連れて行かれた。

「おい、アーチャー」

「なんだ、ランサー」

「メシでの勝負は、金輪際やめにしねぇか。命がいくつあっても足りねえ」

「同感だ。やるならばバーサーカーでも連れ来なければ割りに合わん」

 二人の意見が初めて一致した時だった。



「わたしの……いちまんえん…………福澤諭吉が……」

 食堂の端っこに、彼女の姿があったことに、誰も気がつかなかった。





/小ネタ

・遠坂邸の真相(?)

士郎「おいアーチャー」
アーチャー「なんだ」
士郎「おまえが遠坂に召喚された時、派手に居間をぶっ壊したらしいな?」
アーチャー「ふん、それがどうした。あれは私の落ち度ではないし、召喚早々命じられて修復もしたのだ」
士郎「いくらおまえでも壊れたものを完全に修復なんて出来るのか?」
アーチャー「バカめ。私には投影魔術がある。おまえのソレとは段違いの魔術がな」
士郎「……でもさ。俺達の投影はカタチを維持できなくなると消えるだろ? 傷ついたり壊れたりしたら」
アーチャー「…………………………あ」

その頃の遠坂邸
凛「きゃあああああああ!? い、いきなりテーブルが消えたぁぁぁああ!?!?」


・イリヤルート……?

士郎「俺は、正義の味方にも桜の味方にもなれない」
イリヤ「…………え?」
士郎「俺が本当に守りたいのは、イリヤ……おまえだ」
イリヤ「……シロウ」
桜「ちょっとまったああああぁあぁぁああ!!」
士郎・イリヤ「………桜(サクラ)!? なんでここに!?」
桜「先輩酷いです! ここはわたしを選ぶ場面でしょう!? なのにイリヤさんを選ぶなんて!? 鬼畜です、外道です、ロリコンです! そんな有り得ないルートに入ろうなんてわたし許せません! うわーん、先輩をイリヤさんにとられちゃったー!」
士郎・イリヤ「………………」


・藤ねえ三秒ルート

──虎は何故強いと思う? もともと強い体(誤字にあらず)

藤ねえ「…………」
藤ねえ「……え? ちょっと、これだけ!?」


・ライダーは寒がり(公式設定)

ライダー「慎二、寒いです。聖杯戦争なんてやめてコタツでぬくぬくしましょう」
慎二「バ、バカかおまえ!? そんな格好してるからだろうがッ!」
ライダー「というわけで私は帰ります。後は好きにしてください」
慎二「ちょ、おま、ラ、ライダぁぁぁああああ!?」


/Zeroとのコラボ ※Fate/Zeroのネタバレあります


・虎舞龍

街ですれ違う藤村大河と雨生龍之介

大河「……(??? なんだかあの人、同じにおいがする)」
龍之介「……(COOLなねーちゃんだ)」

・新旧ヘタレ対決

ウェイバー「大丈夫だよライダー……! 僕も、これから頑張っていくから!」
イスカンダル「善し。それでこそ余のマスターだ。では、達者でな……ウェイバー」
ウェイバー「────イスカンダルーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

慎二「大丈夫だよ、桜。僕も、これから頑張っていくから」
桜「頑張らなくていいので早くわたしの目の届かないところに消えてくださいね」
ライダー「桜の言うとおりです」
慎二「……!? 酷い! ここは感動的な別れの場面だろぉぉぉ!?」
桜・ライダー「だって兄さん(慎二)ですし(ですから)……」


・触媒を用意し忘れたダメットさん

バゼット「──天秤の守り手よ…………!」
????「──問おう。貴公が俺のマスターか」
バゼット「……貴方、誰?」
ディルムッド「ランサーのサーヴァント、ディルムッド・オディナだが」
バゼット「……(クー・フーリンじゃない……!? あぁ、ピアス! ピアス忘れた!!)」
ディルムッド「……? どうしたマスター、部屋の隅で膝を抱えて」
バゼット「……(クー・フーリンじゃない……クー・フーリンじゃない……)」
ディルムッド「よくはわからんが。ふむ、マスターは触媒を用意していなかったようだな。当てが外れたというところか」
くるん、とバゼットがランサーの方を見る。
ディルムッド「……なるほど。主と俺の共通点。それが俺を惹き付けた触媒か」
バゼット「……ほくろ!? 左目の下にある泣きぼくろなの…………!?」


・イスカンダルは幼少期、アリストテレスに教育を受けていた

???「$лЩЯЭ£」
イスカンダル「ORT先生! 何言ってるかわかりません!」
ウェイバー「それはアリストテレス違いだーーーーーーーーーーーー!!!」





/混沌

「ふはははははは! やった、やったぞ。とうとう真祖の姫を我が裡に取り込んでやったぞ!」

 歓喜に打ち震える死徒二十七祖が十位、ネロ・カオス。混沌の異名を持つ魔術師上がりの死徒。
 彼の放った創生の土は抗うことさえ許さず、真祖の姫、アルクェイド・ブリュンスタッドを飲み込んだ。

「あ……うっ、く…………は、ぁ、アル、……クェイド!」

 地面に伏した志貴が呻くように、ほんの数秒前にはそこに居たはずの女性の名を呟く。
 だがそれは既に過去の話。
 力は届かず、相手の目論見どおりに事は進んで、守ると、手伝うと約束した人を守りきれなかった。

「くそっ…………たれっ………………!!」

 力を込めようと、四肢はまるで別人のそれのように動いてくれない。
 動けない身体を必死に動かそうとしながら、青く輝く瞳だけはその怨敵を睨み続けていた。

「人間よ。それ以上抗うな。私は元より、貴様になど興味はない。
 私の目的は真祖の姫の捕獲。その目的を完遂した今、貴様がじっとしていれば見逃してやらんこともない」

「はっ……、テメェ…………!」

「やはり抗うか。人の業とは、闇よりも深い。だが先程の私さえ殺せぬ貴様が、今の私を相手取るなど不可能だ。
 見ろ。感じろ。この裡に息づく真祖の力。私は死徒にして真祖に────む?」

 ずくん、とネロの腹部が鼓動する。
 そこは闇。混沌の身体が、どくどくと鳴動している。
 そして、

「────何!? 私の混沌が……割れる!?」

 パキパキパキ。
 形のない無形に亀裂が走る。ペリペリと塗装が剥げ落ちるかのように混沌が開かれる。
 めきゃ、と首が圧し折れるような音が響き、混沌の裡から腕が飛び出す。

「なっ────!」

 息を呑む。
 混沌に飲み込まれながら、これほど抗うことが出来るなど。
 腐っても真祖。朱い月の後継と呼ばれし者か──!

「はっ──! くっぐぅぅぅぅぅぅ! 逃がすか、逃がすものか真祖の姫!
 そこは既に私の世界。貴様の思い通りには……ぐぅぅああああああああああああ!!!」

 それでも亀裂は止まらない。
 こふ、と口から赤い液体を吐き出しながら、それでもなおネロは阻止しようと抗う。
 混沌には縦の亀裂。
 そこから飛び出した腕。
 そしてもう一本。腕が飛び出し、亀裂を左右に広げ始める。

「ぬぅおおおおおおおおおおお!? させん、させるものかっ!!」

「あ、アルクェイド……」

 刻一刻と亀裂が広がり、混沌をより這い出ようとする一つの姿。
 志貴は見た。
 確かに見た。
 その腕に、いや、その手にあるありえないものを。
 其の名は、

 ────肉球────

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?」

 そしてソレは飛び出した。
 ぽてん、ぽてんとボールが跳ね転がるように混沌より這い出し、くるりと一回転してから立ち上がる。
 ソレは身体に纏わりつく混沌の欠片を払い落とし、華麗なステップを踏み始めた。

「あ、アルクェ……イド?」

「おっす元気か志貴。しーきゅーしーきゅー、SOS信号の発信元は志貴かにゃー?」

「は……?」

 えーっと。なんだ、あれ。あえていうなら……ネコ?
 八頭身は軽くあった金髪美人がものすごくデフォルメされた三頭身くらいの生物になっていた。
 なんだ? なんで? 混沌に喰われちまったのか?
 つーか身長縮んだ代わりか、ネコ耳が生えてたりするぞアレ。

「くっ……真祖の姫……!」

「はろーネロ教授。てかおっさんの中くっさくってさー。
 もーたまらんもんだからつい勢い余って飛び出しちゃったお茶目なあたし。
 それはそれとしてジョージボイスのステキなおじさま。
 甘いねー、ハニーハニースウィィィィッッボォイス。ベリーベリーベリーより甘いにゃー。
 んでもって混沌? 666の獣? ぬるいっ! ぬるすぎる!
 あたしを、あ、捕らえたければ〜、あ、その三倍は持って来いというのにゃー」

 どこかで聞いたことのあるような王様セリフを歌舞伎のようなポーズをしながら言って、アルクェイド?はぶんぶんと左右に身体を揺らし始める。
 そしてネロの身体を雷光が奔る。到底理解できない古代言語の羅列が脳裏に叩きつけられた。

「な、なんということだっ! 貴様と私は宿命の敵にして最強の恋敵でなんだかんだで私は貴様のような世にも珍しい獣を我が系統樹に加えなければならないだと!? と、概ね概要は掴めた」

「ウヒョヒョヒョー。さすがはジョージ。ノリも最高にゃ。
 にゃーにゃにゃにゃにゃー、逝くぜジョージ。あちしらの間に言葉などいらにゃい。
 シャーシュシュシュジョー」

 アルクェイド?が∞のカタチに身体を揺らし始める。
 あ、あれはまさしく伝説の……!?

「今宵あちしのニャプシーが血の華を咲かせるぜー。
 つーわけでジョージ。──────おまえも、ネコミミになれ」





/家政婦は掃除が危険

 ────唐突な疑問だが。
 琥珀さんは本当に掃除が苦手なんだろうか……?

「で、本当のところどうなんです?」
「あはは、いきなりですねぇ、志貴さん」

 破顔一笑、にこやかに微笑む琥珀さん。
 確かにいきなりだけど、気になるものは気になっちゃんだし。

「そうですねぇ。わたしとしては翡翠ちゃんのお手伝いをしたいところなんです
けど──」
「ダメです」
「ひぃあああああああああああああああああ!?」

 突如背後よりかかる人の声。誰隠そう、遠野家務めのもう一人のメイドさん、翡翠である。
 足音も気配もなく背後に忍び寄るのはメイドとしてどうなんだ。

「姉さんに掃除をさせるくらいなら猿にでも手伝わせた方がマシです」
「うわー、翡翠ちゃん何気にひどーい」
「……そこまで酷いの?」
「はい。このお屋敷を廃墟にしたくないのでしたら、姉さんに掃除をさせようなんて思わないで下さい」

 ぴしゃりと言い切って恭しく礼をし、通常業務に戻る翡翠。
 隣にはしくしくと流れる涙を着物の袖で隠す琥珀さん。……目薬が見えてますよ。

「ねえ志貴さん。翡翠ちゃんったら掃除に関しては厳しいんですよー。わたしだって掃除くらい──」
「ダメです」
「うひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? ひ、ひすい、一体何処からー!?」
「姉さんは絶対に掃除をしないで下さい。触れる事さえ厳禁です」
「うぅぅぅぅぅ……」

 またも去っていく翡翠を見送って。
 でもなぁ、そんなに頑なにダメって言われると見てみたくなるのが人の好奇心でありまして。

「(琥珀さん。あの壷、掃除しましょう)」

 廊下の一端に飾られた壷を指差しながら、他に聞こえないよう声量を絞って項垂れた琥珀さんに話しかける。
 びくん、と琥珀さんの身体が跳ねたかと思うと、上げられた瞳が少し嬉しそう。

「(志貴さん……わたし、掃除をしてもいいんでしょうか)」
「(うん。俺も見てみたいし。責任は全部俺が持つから)」

 そう言うとパァっと明るくなる琥珀さん。うんうん、琥珀さんは笑顔じゃないとな。

「で、では失礼して……」

 ごくりと生唾を飲み込んで、琥珀さんが壷に触れると───

 パリン

「…………………え?」

 何が起きた?
 琥珀さんの指……いや、爪先が壷に触れた瞬間──壷が破砕したような…………?

「あらあら。翡翠ちゃんてばこんなに脆い壷を飾っておくなんて。ダメですねぇ」

 砕け散った壷をそのままに、じゃあこっちにしましょうと手を伸ばすのは壁にかけられた絵画。
 それも、

 メキャ

「えぇ………………?」

 またも琥珀さんが触れたら有り得ない現象が巻き起こる。
 というか、触れただけで絵画が真っ二つに裂けましたよ……?

「うーん、翡翠ちゃん、ちゃんと毎日掃除してるのかなー? こんな不良品をそのままにしておくなんて」
「いや、あの、こは───」
「そうね! 翡翠ちゃんの分もわたしがちゃんと綺麗にしないと!」

 てややー、と意気揚々と走り出した琥珀さん。遠野邸を彩る数々の名品が、割烹着の悪魔の指先によって破壊し尽くされる。

 パリン、メキャ、ドゴゴゴン、グラッ、ズバーン、ドゥルルルル、ガッゴーン

「…………………」

 琥珀さんの通り過ぎた道には屍だけがある。割れ、砕け、散り、破れ、原型を留める美術品は一つとしてない。
 阿鼻叫喚、一体あの指先は魔法のそれか。整然と整えられていたただの廊下が、一瞬で戦場へと様変わりした。

「やばい……翡翠の言っていたのはこういうことだったのか……」

 確かに、これじゃあの人に掃除なんて任せられるはずがない。
 是が非でも止めようとする翡翠の気持ちが、今ならわか──

 ガシッ

「────へ?」

 突如後ろから肩を掴まれ情けのない声を上げる。
 ヤバイ、振り向きたくない。
 なんだか肩に置かれた手に異様なほど力が込められているし、仁王が明王が後ろにいると確信している。

「ごきげんよう、兄さん。一体コレは何の騒ぎかしら?」
「あ、あああああああ秋葉。ご、ごきげんよう。えーと、これはだな、その……」
「いいえ、言わなくてもわかっています。だって私と兄さんは兄妹ですから」
「そ、そう? あははは、いやーそれは助かるなー」
「おほほほほ」
「あはははは」

「─────兄さん!」
「ひゃい!」

「一体この惨状はなんですか! どうせまた兄さんが琥珀に要らぬことを吹き込んだのでしょう……?
 こうなることが目に見えていたから私と翡翠は琥珀にだけは掃除をさせないよう徹底してきたというのに!
 それが兄さんときたら…………!!」

 いやはや、反論の余地なし。
 はい、はい、と相槌を打ちながら長い長いお説教を戦場のど真ん中で正座をしながら聞かされる俺。
 ああ、そんなことよりも早く琥珀さんを止めないとやばいんじゃないか、秋葉?





/アーサー王の真実

「王、もう間もなく敵の軍勢がこの地へと参ります」

 伝令より伝えられた報を受け継いだ側近が王へと報告する。
 本陣として構えられた場所に王は座し、周りの兵士達は慌しく動き回っている。
 今日この地を戦いの場所と定めたアーサー王は敵の到来を待ち望んでいた。
 目を閉じ報を聞き終えた王がその精悍な目を開く。

「数は?」

「一千ほどかと」

「……分かった。下がってよい」

 簡潔に報を済ます。
 敵の一千に対しこちらは二百。その数実に五倍。
 だが王に焦りはない。むしろこの展開は予想通りである。

「ベディヴィエール! 我が剣を持て!」

「はっ!」

 差し出されたそれは紺碧の青空を思わせる澄んだ青色に黄金の刺繍を編みこんだような鞘。
 そしてその鞘に収まるは星の鍛えし最強の聖剣。
 名をエクスカリバー。湖の貴婦人より授かりしアーサー王を王足らしめる最強の武装である。

 それを手に取り王は立つ。

「行くぞ我が騎士達よ! 敵の数は我らの五倍!
 だが臆するな! 汝等が王がある限り、我々に敗北などありはしない!!」

 ウォォォォォォォォォォ!!!
 高らかに突き上げられた光の聖剣。王の鼓舞に応える騎士の咆哮。
 それに満足気に頷いた後、王は戦地へと赴く。



 遠方に見える軍勢は地平を埋め尽くすかのようだ。
 だが恐れも怯えもない。
 過信ではなく自信。絶対のそれを纏い王は先陣に立つ。

「時は満ちた。この戦いに勝利し、我らが故郷にまた一つ凱歌を響かせよう。──行くぞ!!」

 開戦の合図。
 猛々しいウォークライと共に兵が、騎馬が戦場を駆けていく。
 その先頭にはアーサー王の姿がある。
 指揮官として本陣に座すのは性に合わない。
 一騎士として、王として騎士を率いる事こそアーサー王の戦である。

 すらりと引き抜かれた黄金の剣。
 その鞘は王を守護し、その剣は王の敵を駆逐する。

「はあああああああああああああああああ!」

 振り上げられた剣。アーサーの膨大な魔力を光へと変換し、増大させる神造兵装。
 それが今──振り下ろされる!!

「エクスカリバー! エクスカリバー! エクスカリバァァァァァァァァ!!!」

 ギャァァァァとかウワァァァァと悲鳴を上げて光に飲み込まれていく敵の兵士。
 戦術も戦略も何もない。完全な力での屈服。
 聖剣を振り下ろしては振り上げて。振り下ろしては振り上げて。
 たった一人で、アーサー王は戦場を蹂躙した。



 えへん、と胸を張って過去の己の戦を誇るように語って見せたセイバー。
 それを聞いていた士郎と凛はえもいわれぬ表情で沈黙したままだ。

「どうかしましたか、シロウ、凛?」

「い、いや、何でもないよセイバー」
「そうよそうよ。いやーやっぱり生前のアーサー王はすごかったのねー」

 冷や汗気味に弁明する士郎と凛ではあるが、セイバーはそれに気づかずこくこくと頷いている。

「あ、セイバーも話疲れたでしょう。お茶淹れて来るわ」
「そ、そうだな。じゃあ俺はお茶受けでも」

「それは有り難い。感謝します、シロウ、凛」

 そそくさと台所へと移動して、二人は溜め息をついた。

「そんな戦い方してたのね……セイバー。そりゃ鞘取られたら転落の一途を辿るしかないわ……」
「だよなぁ……。鞘装備で完全無敵。敵は聖剣で一薙ぎ出来るんじゃあ、戦術なんて入り込む余地はない」

「王は人の心が判らない……ってのもこの逸話のせいかも……」
「騎士達出番ないからなぁ……戦果は全部セイバーの独り占めだし、名を上げる暇もないし」

「…………」
「…………」

 痛い沈黙が流れる。
 コポコポとやかんが沸騰し始める音だけが厭に耳に響く。

「まあ──」
「──何にしても」

 セイバーの猪突猛進はその辺りから来ているんだろうなぁ、と二人は遠い目をした。









後書きと解説





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