剣の鎖 - Chain of Memories - 第二話









「…………………………」

 椅子に座り足を組んだまま唇を尖らせ、その状況を理解していない者ならば、知らず口を噤まざるを得ないような剣呑な雰囲気を纏うランサー。ギラついた瞳は射殺さんばかりに何もない中空を睨み続ける。

「……とりあえず、落ち着いてはどうですか」

 むくれるランサーを諭すバゼット。
 ベッドに横たわったまま、困ったような表情でそう告げた。

「別に、落ち着いてる。ただ解せないだけだ」

 そう弁解するも、誰がどう見てもランサーは怒っていた。
 この一週間程で彼の性格はそれなりに把握しているつもりだったけれど、まだまだ知らない事は多いらしい。なぜなら、これほどまでに怒りを露わにした場面をバゼットは見たことがなかったからだ。
 バゼットは溜め息一つ、とりあえず何故こんな状況になっているかを再度確認することとした。

 現在、翌二月二日の午後。
 目覚めた時には傍にランサーの姿はあり、既にこの状態であった。
 最初は何を問おうとも答えなかった彼だが、途中から折れたのか、ぽつりぽつりと昨夜私が眠りについた後に起こった事を話し始める。

 ランサーの話を聞き終わって最初に感じたのは驚愕と当惑。
 無理もない。
 何故ならランサーは、

 ────同じサーヴァント相手に傷一つ付ける事も出来ず、見逃されたのだから。






狂い廻る歯車/Prelude II




/1


「■■■■■■■■■■──────!」

 咆哮と共に打ち下ろされる巨大な斧剣。
 だがその破壊を撒き散らす一撃はランサーの姿を捉える事は出来ず、深く大地へ叩きつけられた。めり込むように振るわれた剛剣は轟音を響かせ、土壌を飛沫と化し、木々を圧し折り、岩石さえも粉砕する。
 一撃受ければ即、致命傷。致命には至らずとも戦力は激減するだろう。それだけの破壊力を、敵のサーヴァントは有していた。

「ハッ、とんでもねえな、おっさん」

 回避したランサーは余裕気に相手を見やり、槍を構え直す。
 彼我の距離は七メートル弱。
 ランサーにとってはこの程度の距離は既に射程距離。対するバーサーカーは岩のように微動だにせず、背後にいる主を庇うようにただ立ち尽くす。

「今度は、こっちから行くぜ────!」

 一際強く大地を蹴り、疾風の速度を以ってバーサーカーへと肉薄する。
 間合いに入ると即座に打ち出される刺突の嵐。流れ落ちる滝の水流が、大地との間に巻き起こす飛沫の如き苛烈さを以って繰り出される、回避を許さぬ神速の槍。

 それを迎撃するは豪風を靡かせる無骨な剣。
 超重量の得物を苦もなく振るい、バーサーカーは手数で勝るランサーと相打つ。

 奏でられるは鋼の応酬。一つぶつかり合う度に空間が揺らぎ、火花が散る。
 だがそれも数合。
 力で圧されるランサーが僅かに後退する。

「ぐっ──────!」

 重い。余りにも重く、大気すら切り裂かんと振るわれる岩の塊を完全に受けきることなど不可能だ。ランサーはその長大な得物で敵の得物を払い、弾き、薙ぎ、一定の距離を保ち間合いを詰めさせない事で戦闘を続行させる。

 リーチで僅かにアドバンテージを得るランサーは、相手との距離を戦闘の最中に調節しながら槍を走らせ続ける。
 一歩間違えば自分の身体を引き裂かれ、血に塗れるのは必定。それでもなお、身に迫るスリルと綱渡り的なこの状況を愉しむように口元を歪ませ剣戟を繰り返す。

 他者の介入を許さない死地において、何故かは解らないが、バーサーカーは攻勢に転じて来ない。
 間断なく繰り出される槍に恐れを為している様子などないにも関わらず、じりじりと間合いを詰めようとするだけだ。

 本来、バーサーカーのクラスとは総じて攻性だ。理性を剥ぎ取られ、本能の赴くままに敵を打ち倒す。それを鑑みれば、この眼前の敵の行動は解せない。バーサーカーは主を護るようにただ佇み、こちらの力量を測るような攻撃しか繰り出してこない。

 しかしそんな事はランサーには全く関係がない。攻勢に転じて来ないのならば、こちらが一方的に攻め立てるのみだ。
 事実として、ランサーの槍は的確に相手の急所を突いている。相手がいかな膂力で得物を振るおうとも手数で勝るランサーの槍の全てを防ぎきれてはいない。
 故にその肉体へもダメージが通っている筈なのだが────

「■■■■■■■■■■──────!」

「────チィ!」

 傷を負い、勢いを衰えさせるどころか、より加速度的に重くなる一撃。
 そしてバーサーカーの肉体を突いたランサーの手に還るのは鋼の感触。鋼鉄の壁に向かって槍を繰り出しているような感触だけが手に残る。

 ────有り得ない。

 鎧でも着ていれば話は別だが、目の前の敵は生身。強靭な筋肉の鎧を纏ってはいるが、槍の一撃が通らない程の筋肉など有り得まい。いや、たとえ鎧を纏っていようと、高速を更に上回る速度繰り出されるランサーの槍であれば、貫く事とて不可能ではないだろう。

 けれども事実としてランサーの槍は鎧すら身に着けていないバーサーカーの肉体を貫けない。故にこのサーヴァントは鋼の鎧を上回る、“何か”を纏っているとしか思えないほどの硬度を誇っていた。

「ハッ────!」

 全力で槍を横薙ぎに払い、相手の得物を弾くのとほぼ同時に仕切り直しをする為か、ランサーは後方へと大きく跳躍する。
 槍を握り直し、視線だけはバーサーカーを貫くには十分過ぎるほどの敵意を秘めていた。

「…………解せねえな。
 なんだ、テメェのその硬さ。オレの槍が貫けない身体などと、ふざけてやがる」

 追撃の様子のないバーサーカーを見やり、疑問を口にする。
 もちろん返答など期待していない。
 おそらくだが、バーサーカーを護る鎧こそがヤツの持つ宝具なのだろうから。

「あら、当たり前じゃない。
 そんなナマクラでバーサーカーに傷をつけようなんて、図々しいにも程があるわ」

「なんだと─────?」

 マスターたる少女の言葉にランサーの殺気が膨れ上がる。
 師より譲り受けた紅の魔槍。
 幾度もの戦いを共にし、悲劇と血に塗れる己が相棒を貶された怒りか。


「────ならば受けるか、我が必殺の一撃を」


「バーサーカー!」

 主の叫びを受けて、バーサーカーは鈍重な音を響かせながら腰を深く落とした。理性などなくとも、幾多の戦いを生き抜いてきた第六感がランサーの繰り出すであろう一撃に備えさせたのだ。
 対するランサーは穂先を地に擦れるほど深く沈め、身体すら槍と化す程に気を尖らせる。

 一時の静寂が支配する空間。

 大気が凍る。比喩ではなく、真の意味で空間全てを凍らせていく。それは拍動する魔槍の成せる業。全てを奪い尽くさんと鳴動する。
 茨のような殺意と敵意がバーサーカーを包囲し、呼吸すらさせまいと赤い双眸が己が相棒を貶めた仇敵を睨みつける。
 ランサーの槍は貪欲に周囲より魔力を搾取し、発動の時を待ち望む。

 響くのは鼓動。
 己の命の灯火の脈打つ音だけが耳に残る。

「────────」

 狙うのは心臓、ただ一点。
 眼前の敵の灯火を刈り取る為に、因果さえ覆す魔槍が鎌首を起こしていく。


「“──────刺し穿つゲイ


 増大する魔力。主の言葉に呼応するように紅い魔槍がより禍々しく朱に染まる。
 英雄とは、単体で英雄として祀り上げられるものではなく、半身としてのシンボルを含めた称号である。その半身こそが宝具と呼ばれる唯一無二の彼らの武装であり、戦局を覆すだけの力を秘める絶対の切り札である。

 つまりは宝具とはただの武器ではない。
 ────担い手の発動の意思と、その真名を以って放たれる時。


死棘の槍ボルク──────!”」


 真なる力を発動させる!

 神速で撃ち出される刺突。
 発動の瞬間、既に『心臓を貫いている』という結果を生み出してから走る閃槍。
 そこに逃げ道はなく、相対する者は甘んじてその身を散らすしかない。

 ────故に必殺。

 狙えば必ず心臓を穿つ槍。
 因果を味方につけるこの魔槍に狙われた者に、生き残る術などありはしない………!

「■■■■■■■■■■──────!」

 だが知るがいい因果を繰る者。
 概念は、概念によって破られるという事を………!

「な──────に………!?」

 紅い軌跡はバーサーカーの目前で停止する。耳を劈く衝突音だけを残し、心臓を穿つ筈の槍は鋼の肉体の前で止まる事を余儀なくされた。
 ランサーの確信と共に撃ち出された赤光は、因果を捻じ曲げる事なく、千の棘を撒き散らす事無く沈黙した。

「あーあ、本当につまらない。
 それでわたしのバーサーカーを倒そうとしていたの? 滑稽を通り過ぎて呆れるわ。
 帰ろ、バーサーカー。なんだか眠くなっちゃった」

 ひょいとバーサーカーの肩に乗った少女はそれ以上ランサーを一瞥することなく、無傷のバーサーカーと共に戦場を後にする。
 後に残るのは、呆然と立ち尽くすランサー唯一人だった。





/2


 確かにそれは有り得ない事。
 ランサーの槍、ゲイボルクは発動すれば最後、結果を確定した後に過程を通る。故にどのような軌跡で撃ち出したとしても、必ず心臓を射抜く筈なのだ。
 それを覆せるとすれば、余程の強運の持ち主か。いや、いかな強運であろうとも傷一つ付けられないのは不可解だ。ならばやはり…………。

「ランサー、腐るのはそこまでよ」

「あ?」

「結果として貴方は敵を倒せなかったけど、負けた訳じゃない。生き残ったのだから、この教訓を次に活かせばいいのです」

 それは彼が最も良く知るところだろう。そう私に教えてくれたのは、貴方なのだから。
 未だ動けない身体を横たえたまま、バゼットはその言葉を心の奥で呟いて視線の先にいるランサーを見据えた。

「…………ま、それもそうか。あー、まさかアンタに慰められるとはねぇ」

 頭を掻きながら口元を歪ませる。そこに先程までの剣呑な雰囲気はなく、いつも通りのランサーの姿がそこにあった。
 ようやく元の鞘に戻ったランサーを見やり、バゼットも口元に僅かな笑みを残し、ランサーと共に次に繋げる為の策を練ることにした。

「まずは得られた情報を纏めましょう。
 敵はバーサーカー。マスターは銀髪の少女。そしてバーサーカーにはランサーの攻撃の全てを防がれ、更に宝具として用いたゲイボルクさえ止められた、そうですね?」

「ああ、間違いねえ。
 あの硬さは尋常じゃねえな。鎧でも貫くほうがまだ楽そうだ」

 手も足も出なかった、とはまさにこの事。
 バーサーカーにとってみればランサーの槍突など身体に集るハエ程度のものに感じられたのだろう。
 思い返すだけでも苛立ちは募っていく。

「いかな筋肉の鎧でも貴方の刺突を防げるとは思えない。ましてや宝具による一撃まで防ぐなど有り得ない。
 ならば導き出せる答えは一つしかありません」

「──────宝具、か」

「ええ。考えられる防御系の宝具としては、系統は違いますが私の魔術礼装のように相手の攻撃をキャンセルさせる事。
 あるいは攻撃自体を無効化する事の二つです」

「……キャンセル、てのとは違うな。俺のゲイボルクは間違いなく発動し相手の心臓を目掛けて走った。
 だが衝突の瞬間、何かに弾かれるように止められたって感じかね」

 そこで両者は一考する。
 キャンセルでなければ、攻撃の無効化だろう。だがそれはどこまでを無効化し、どこまでが有効なのか。それが解らなければ手の打ちようがない。

「……宝具の勝負とは概念と概念の潰し合い。より強力な概念を持つ方が下位の概念を潰すのは道理です。
 ならば相手の持つ概念武装は、少なくとも貴方の刺突よりも上位に位置する概念である、と考えられますが……」

 そこまで口にして戦慄する。
 ランサーの一撃はランクで表せばBに相当する一撃の筈。それすらも無効にする概念武装など、どれほど常軌を逸しているのか、考えるまでもない。
 加えてランサーの槍には『必ず心臓を穿つ』という結果をもたらす概念を宿している。それすら阻み、結果も過程も無視して無効化されたとなると…………。

「推測ですが……バーサーカーを守護する概念武装は、神秘の度合い、あるいは純粋な威力によって成否の判定をしているのではないかと」

「……どういう意味だ?」

「前提として貴方の槍と同じように因果を捻じ曲げるものではないとします。
 そう仮定して考えた場合、まず発動したゲイボルクを止める手段は存在しない。それは私達が一番理解している事です。
 ですがそれが防がれた。ならば敵の概念武装とは一定以上の威力、あるいは神秘を有する攻撃でなければ全て無効化するのでは、と」

「……要するに超威力の一撃か、ランクで言えばA以上の攻撃以外無効化するってか?
 ハッ、一体そいつはどんな化け物だ」

 重い溜め息と共にランサーは椅子に身体を預ける。
 ギシ、と椅子が僅かに軋み、窓から木漏れ日の射し込む部屋に残響する。

「あくまで推測です。バーサーカーの正体が判明すれば話が早いのですが、今の段階ではその程度の推測しかできない」

 こちらも溜め息一つ。
 動かない身体ではランサーの助けとなることは出来ない。ならば唯一自由なこの思考を以って僅かでもランサーの助けになりたい、とバゼットは思うのだが、語れば語るほど敵の能力の強大さが浮き彫りになるだけだった。

「ちなみにバゼット。そんな宝具を持ってる英霊に心当たりはあるか?」

「そうですね……。頑強さという点で見れば、彼の“ニーベルンゲンの歌”に登場する英雄シグルドなどがそうでしょう。
 邪竜ファーヴニルを退治した際、魔力の篭った血を浴び、いかなる武器も受け付けない不死身の肉体を得たと聞きます。
 もし彼ならば、今までの前提を覆して背中にある一点以外は弱点足り得ない。
 しかし彼の者が所持する中で最も有名な武器は魔剣グラム、あるいは太陽剣グラム。それを考慮するなら、彼はセイバーのクラスに該当しそうなものですが……」

 それに二メートルを越す長身、岩にも似た超重量の斧剣を振り回すなど、イメージするシグルドとはかけ離れている、と付け加えた。

「何にしても、もう一度戦わなければ詳細は見えてこない。ですがバーサーカーは今は保留としておきましょう。
 私がこの状態では、貴方も全力では戦えないでしょう?」

「なんだ、気づいてやがったのか」

 ランサーの習得している十八の原初のルーン。その加護を最大限に活用すれば、ランサーの能力を一時的に底上げし、敵の強力な一撃さえも遮る防壁と成り得る。
 だがランサーはそのルーンのほとんどをバゼットの治療と屋敷の警護に当てている。つまり現在のランサーは、自身を英雄足らしめている武装の一つを欠いているのだ。

「それが判らないほど愚かではないつもりです。
 そしてランサー。
 私が戦線復帰し、貴方が全力で戦えるように成りさえすれば────」

「────どんな敵にも負けはしねえってか」

 二人の顔に宿るのは笑み。
 お互いが背中を預けあい戦うのならば、敗北など有り得ないと。







「それはそれとしてですね……。話は変わりますが……」

 一応の話の決着を見たところでバゼットはそう口にする。それはどこか自信無さげで、訊く事を戸惑っているような口調だった。

「あん? なんだ、腹でも減ったか。ああ、そういやアンタは昨日から何も食っちゃいなかったな。治癒の基本は栄養のある食事だ。体力を回復する為には少しでも美味いもん食っといた方がいい」

 まあこんな場所じゃそれほど上等なモンは出せねえけどな、と彼は付け加えて、買い置きの食事を探しに立ち上がった。

「あ、いえ。確かに身体は空腹を訴えていますが、私が訊きたかったのは……その、違う事です」

 ごそごそと買い物袋を漁っていた余りにも現代慣れした英雄の背中にそう言った。訝しげな表情を以ってバゼットを見つめる赤い瞳は、続きを言えと無言の肯定を示していた。

「…………ランサー」

「なんだ」

「………………」

「………………」

「………………」

「なんなんだよ、はっきり言わないとわかんねえぞ?」

 バゼットは意を決する。だがまだ戸惑われるのか、毛布の上に投げ出された自由の利かない左腕ではなく、かろうじて動く右腕で自らの身体を覆うその毛布を掴み鼻先まで深く沈みこませ、

「な、何故……私は、その、は、裸……なのですか?」

 そう、頬を赤らめ口にした。
 昨夜は心身共にかなりの疲弊していた為、深く考える事が出来なかった。だが今日目覚めて改めて己を確認すれば、否、確認などするまでもなく己の肌が衣服に覆われていない事を理解していた。

「──────。……何故ってそりゃ治療を施す為だろ。左腕は言うに及ばず、他にも怪我がねえか確認しとかねえといけなかったからな」

 なに当たり前の事を訊いてんだ、と言わんばかりにけろりと言ってのけて。ランサーは振り返っていた首を買い物袋へと戻した。
 その背中をきょとんとした瞳で見つめるバゼット。あまりにも簡潔。あまりにも普段と変わらない口調で放たれた言葉を理解に至るには、数秒の時間を要した。

「なーに呆けんてんだ? 腹減って思考も纏まらないのか?」

 袋よりコンビニで買ってきた弁当と惣菜を取り出し、それを手にランサーは椅子へと戻った。

 目の前の女性は食に関してはとりわけ関心がない。食えるか食えないか。栄養があるかないか。その程度の判断基準しか持っていない。
 それはランサーに言わせれば勿体無いの一言に尽きる。彼の時代では有り得なかった食事がこの現代には溢れている。それなのに、彼女が缶詰という大して美味くもないモノを主食としているのは気に入らなかった。
 だから彼は勝手に街を徘徊し、より美味そうな食事を求めた事がある。無論、そのような勝手を働いたのちにこっぴどくお叱りを受けたのは言うまでもなく、ぶつぶつ言いながらも結局彼女も食べた事は語るまでもない。

 椅子に腰掛けたままビリビリと弁当の封を切り、パチンと割り箸を割る。

「ほれ、食うんだろ?」

 動けない彼女を気遣ってか、彼は器用にその箸で唐揚げを掴み彼女の前に差し出す。ほれほれ、と口を開けと箸が彼女の目の前を右往左往する。
 それに、

「だ、だからと言って、し、下まで脱がすことはないでしょう!」

 彼女はそう吼えた。

「………………あ?」

 今度はランサーがその言葉の意味を追う番だった。彼にとっては彼女の先程の発言などさして意に返すほどのものではなかったのだが彼女にとってはそうではなかった。
 それもそうだろう。幾ら怪我を負っていたとしても、彼女も女性。とりわけ臨戦時でも無ければその心は乙女のそれであるのだから。

「あー……なんだ。なにか不満だったか?」

「なっ……ふ、不満というわけではありません。事実、私は怪我をしていましたし貴方の行動は最善だわ。で、でも…………」

 煮え切らない答えだった。
 バゼット自身、まだ己の思考を纏めきれていないのだろう。ランサーの行動を正しいと思う反面、憧れた、本の中に見た、ずっと夢見ていた英雄に己の知らぬ間に衣服を脱がされていたなど、どう言葉にしていいのか判らない。

 深く毛布で顔を覆ったまま視線だけを彷徨わせているバゼットをランサーは胡乱な頭で見つめている。そこにふと、嗜虐心にも似た感情が芽生えた事をランサーは自覚した。

「ああ、そういう事。毛布被ってるっつっても寒いか。この街は比較的温暖なようだが、それでも冬ってのは寒いもんだからな」

 弁当をテーブルに置き、再度ランサーは立ち上がる。
 バーサーカーと戦ったのち、ラックだけでなくバゼットの他の荷物──衣類の入った鞄と札束が詰め込まれたジェラルミンケース──を持って帰ってきていたので、衣服の入った方の鞄を漁り始める。

「な、なにをしているのっ!」

「なにってアンタの服探してるだけだ。つーかスーツばっか何着持ってんだよ。もっとこう普通の女らしい服持ってねえのか」

「こ、この街へは戦う為に来たんですから、戦闘に適した衣服以外は持ってきていません。
 ああ、そうじゃなくて────ランサー! 勝手に人の衣服を漁らないでっ!」

 衣服を詰め込んだ鞄である以上、そこにはもちろん下着の類も入っている。大きな背中で一体何を物色しているのかはバゼットからは見えないけれど、ほほう……なんてあからさまな感嘆の声が聞こえてくるのだから気が気ではない、……のだが動くに動けないのでどうしようもない。
 英雄色を好むとは良く聞くが、この男のそれは行き過ぎだ。羞恥心とかそんなあって然るべき感情がない。いや、当たり前すぎてその感情に戸惑うことがないのだ。

「スーツで寝るのって不便だよなあ。バゼット、ワイシャツだけでいいか?」

「ええ、構いません。じゃなくて、もう、一体何がしたいの貴方は」

「寒いんだろ? だから服着せてやろうってだけだ」

 ニヤニヤと。振り返ったランサーは笑みを湛えていた。
 それでようやく、バゼットはランサーの真意を理解した。自分は今自力動くことがほとんど出来ない状況だ。そんな中、衣服を着る為にはどうすればいいか? 簡単だ。他人の手を借りればいい。そしてその他人というのがランサーをおいて他ならない。

「ランサー?」

 ワイシャツを手にじりじりと近づいていたランサーにバゼットは横たわったまま笑みを向ける。向けられた笑みはこの上なく綺麗で、それでいて凄惨な笑みだった。
 ランサーはバゼットの表情をまじまじと注視し、一歩後退した。

「怖えな。美人がそんな顔するのは何より怖え」

 ふう、とランサーは嘆息し両手を挙げて降参の意を示す。

「まあ冗談だ。つかそんなマジになんな。マスターとサーヴァントのちょっとしたコミュニケーションだろ」

 じぃっと批難の目を向けるバゼットの視線をやり過ごし椅子に腰掛ける。
 お堅いマスターだとは思っていたが、中々どうして。横たわるその姿。自分を見つめる拗ねたような瞳はやはり年相応、いやそれ以下の少女のモノだ。
 思考の切り替えというよりもカタチから入るタイプなのだろう。あのスーツを鎧とし、それを身に着けている間は鋼鉄の意志で敵を排除するキラーマシーンと化すが、それを脱いだ今はその面影を微塵も感じさせない。

 そうしてランサーは思う。このマスターをもっと知りたいと。

「……何を笑っているの。気味が悪いわ」

「言うに事欠いてそれか。ああ、だがまあ笑っちまうのは仕方ねえ」

 いいマスターに引かれたものだ。だからこそ、このマスターを失わずに済んだ僥倖に彼は胸を安堵させた。

「?」

 首を傾げるバゼットを見やり笑みを浮かべる。
 さあ、話を続けよう。限りある時間だが、この時だけは全てを忘れて語らうくらい、誰も咎めはしないだろう。





/3


 ──────夜を駆ける。

 バゼットから自由行動の許可を得たランサーは独り、今宵も夜の闇を斬り裂いて行く。
 ただ一つの誓約。
 令呪による命令ではなく、純粋な約束と共に。

「“必ず生きて戻る事”か。
 ────ハッ、んな事言われちゃ、死ぬに死ねねえじゃねえか」

 無論、死ぬつもりなど毛頭ない。
 本来マスターとは戦いの場に置いては邪魔になる存在だ。人智を超えた一対一の戦争を繰り広げるサーヴァントの戦場ではマスターなど足枷、弱点以外に他ならない。
 だがバゼットは違う。自分を引き当てただけの事はあり、背中を預けるに値する唯一のマスターだ。
 故に、共に戦場を駆ける前に現世より消えるつもりなど微塵もなかった。

「…………なんだこりゃ」

 偶然に踏み込み、足を止め、見上げるのは広い砂の更地と白で統一された巨大な建物のある空間。俗に言う学校である。
 外側からはなんら異変を感じなかった空間は、内側に入れば異界へと様変わりする。

 ──────結界。

 しかも見るからに随分と性質の悪い系統のものだ。まだ起動はしていないようだが、準備は進められているといった感じだった。

「こんな結界を張りやがるのは何処のバカだ。
 こんなバレバレの結界じゃあ、狙ってくれって言ってるみてえなもんじゃねーか」

 人気のない学校をぐるりと見回す。
 立っているだけで、ぬめるような気色の悪い感覚が肌に纏わりつき、舌打ちをする。

「……とりあえず、基点だけでも探しとくか」

 無論それを見つけ出しても解呪する術をランサーは持ち合わせていないし、今の所、義理立てする理由もない。
 ただ、あのマスターがこれを知れば解呪しようと動くかもしれない。ならば探すだけ探しておこう、という腹積もりである。他に敵のマスターの当てもなかったので丁度良いと言えば丁度良かった。

 基点の在り処は、この結界内でより魔力の淀みの深い場所を見つければいい。
 幾つかあるだろう基点の内、より淀んでいる箇所を見つけ出す。

 校舎の壁面にある取っ掛かりを伝い、一直線に屋上へと到達する。
 その一角に結界の基点たる呪刻は存在していた。地面を見やるも、やはりそう簡単に解呪出来そうな代物ではない。
 元よりランサーは戦闘に特化したサーヴァント。ルーンこそを習得していても、その他の魔術については知識を持つ程度である。

「さて、どうしたもんかね……」

 屋上から眺める風景は既に闇色。
 陽は傾き、夜の闇と月と星達が支配する世界へと移り変わっている。
 そして今日は風が強い。
 雲は足早に空を流れ、月は時折その間隙から顔を覗かせる程度だ。

 そんな、灰暗い世界に。

「──────っ!」

 人の気配。
 鉄の擦れる音を響かせながら、重々しく開かれる扉。

 ────まだ人がいやがったのか。

 給水塔の裏に身を潜め、気配を殺す。
 ……話声が聞こえる。未だ大人へと成りきれていない少女の声。だが聞こえるのはその少女の声だけだ。なのに、少女の口調は誰かに話しかけるソレだった。

 現代には携帯電話なる利器があるのだが、ランサーがその存在を知る筈もない。
 故にその行動を不審に思い、影よりその少女の姿を盗み見ると────

「…………………」

 真紅のコートを風に靡かせ、夜の闇に溶ける黒の長い髪を流す少女の後姿。
 少女は地面へと屈み込んでおり、その場所は先程見つけた呪刻のある場所と同じ。少女が何かの呪を紡ぐと基点に溜まっていた魔力が霧散していく。

 呪刻の消去、あるいは妨害の為に訪れたのだろう。ならば彼女は結界の主ではない。
 だが結界が張られている事を知り、あまつさえ呪刻を消去するなど間違いなくこちら側の人間だ。
 何より確信がある。少女の脇、そこに控える存在の名は。

 ────見えてるぜ、サーヴァント。

 霊体化していようと同じサーヴァントにはその存在を認識できる。マスター同士がその令呪によって互いの存在を認識し合うように。

 運がいい。結界の主ではなかったようだが、目の前にいるのは他の六組のうちの一組、マスターとサーヴァントだ。偵察という任を自身に課している以上、ランサーに彼女らを見逃す理由は存在しない。

「────なんだよ。消しちまうのか、勿体ねえ」

 高みより心にもない言葉で相手の視線を釘付けにする。
 さあ、パーティーを始めよう。





/4


 ────戦場に咲くのは大輪の花。

 火花とはよく言ったものだ。二人の従者が鬩ぎ合う空間には、火の花が咲いては消えて、咲いては消えていく。
 そして響くのは鉄と鉄の奏でる剣戟音。一本の長槍と一対の双剣を手に踊り続けるのは、奇しくも赤と青の二人の男。

 青影は敗北を告げるように刺突を繰り出し、赤影は勝利を謳うように切り結ぶ。
 音は高く高く高く。
 暗闇さえ晴らすように、演舞は有限より無限へと続いていく。

 終わりなどないかのように感じられたその剣戟も、僅か一手で終焉を迎える。
 真実、無限に連なるものなどありはしない。いつか終わりは訪れるのだ。

 一際甲高い音と共にランサーは赤い騎士より距離を取る。

「────二十七。それだけ弾いてまだあるとはな」

 それは本来有り得ない事。
 英霊の持つ宝具とは唯一無二。多くとも二つ程度だろう。だがこの赤い騎士はそれだけ弾いても、次の瞬間にはまったく同じ剣がその手に握られているのだ。

「そういう君こそ、先程までの気勢はどうした? 足を止めては槍兵の名が泣くぞ。
 それに君のマスターの姿は見えないようだが。独りでサーヴァントをうろつかせるなど、余程の腰抜けと見えるな」

 あからさまな挑発。
 だが敵がランサーの事情を知るわけもない以上、そう取られてもおかしくはない。

「ハッ、うるせえ。こっちにも色々と事情があんだよ。
 それと…………足を止めたからには理由がある。そう思い至れ」

 ────構え。
 昨夜放った宝具と同じ。因果を狂わす魔槍に魔力が集っていく。

 対峙する赤きサーヴァントは両の手に握る双剣をそのままに、ただその様を眺めている。
 だがその背後に控えるマスターたる少女の顔に映るのは焦り、惑い。
 理解している。
 その槍が放たれれば、地に堕ちるのは自分のサーヴァントの方なのだと。

 だが止められない。この両者の空間に介入する術などこの場には存在しない。
 唯一それが可能だとすれば、

「──────誰だッ……!」

 この場には存在しないはずの第三者の登場である。







「……ぬかった。まさか他の人間がいるとはな……」

 校舎の方へと駆けて行ったその人物を追い、独り夜の闇を斬り裂いていく。
 運がいい。と最初は思ったが、どうやらツキは最悪らしい。バゼットは重傷を負わされ、バーサーカーには見逃され、今宵の戦いも不完全燃焼で幕を閉じる。

「まったく────前途多難とはこの事か」

 元より自分の悲運を知ってはいたが、ここまで酷いと辟易する。だがそんな事を考えた所でどうにもならない。自分で道を切り拓くだけだ。
 とりあえずは目先の目的、逃げた人物を追う事に集中する。
 存外足の速い目撃者。しかしそれは人の領分での話だ。人外の力を持つサーヴァント相手に、たかだか人間一人が逃げ切れる道理はない。

「────よぉ。案外遠くまで逃げたな、おまえ」

 追いついた時には少年は息も絶え絶え、足は既に死んでいる。
 これ以上の逃亡を不可能と悟ったのか、へたり込んで両手足を駆使して後じさる。だがそれも数歩。背後にある壁に阻まれて、少年は退路を失った。

「運がないな、坊主。
 こんな夜更けまで一体何してやがったんだ?」

 還る言葉などない。
 目の前にいるのは狼に食われる寸前の群れから逸れた一匹の羊だ。ただ違うところがあるとすれば、これからその身に降りかかるであろう災厄を、これ以上ないほど理解できる点だろう。

「…………………………」

 だがランサーは動かない。
 見られたからには始末するのは道理。神秘とは秘匿されるべきものなのだ。たとえこちらに落ち度があったとしても、運が悪いのは目撃者の方なのだから。
 そんな一方的な理屈で神秘を秘匿する存在こそが魔術師と呼ばれる者達。

 だが─────

「…………運がいいな、坊主。いや、運を試されるのはこれからだ」

「…………………ぇ?」

 蚊が鳴くほどの小さな声が少年の喉から漏れる。
 それと時を同じく、ランサーはその手の槍をぐるりと翻して、

「──────がっっっ!?」

 無遠慮に少年の頭を殴り飛ばした。

 崩れ落ちる少年。
 だが単純に殴り飛ばしただけの一撃。死に至る一撃ではない。

 音が消え、灯りのない空間に月が翳る。
 程なくして暗い廊下の奥から微かに反響する靴の音。その元は先程の主従だろう。

「じゃあな、坊主。
 テメェの生死は、あのお嬢ちゃんが握っている」

 それだけを言い残して、ランサーは窓より闇の中へと飛び込んでいった。





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「…………バカですか、貴方は」

 はぁ、と深い溜め息と共にバゼットの喉から零れたのはそんな言葉。
 ランサーは目撃者の始末をせずに帰って来たという。それがどれほど危険なことか、わかっているだろうに。

「……んなこと言ってもなぁ。
 オレじゃあ、あの坊主を始末するしか方法はねえが、あのお嬢ちゃんくらいの力量なら幾らでもやりようがあるだろ」

 一般人を巻き込みたくねえ、って言ったのはアンタだろ。と付け加える。
 確かにその考えをバゼットは提示したが、それは戦闘の前後の話だ。そも人目のある場所で戦うこと自体がバゼットの思惑の外にある行為。協会の規律に従い、神秘は秘匿された上で戦闘を行わなければならないのだ。

「………………」

 いや……しかしランサーの行動は結果としては悪くない。先日の監視役の魔術師ならともかく、一般人相手に消去を行うのは流石に気が引ける。

 それにランサーの言う似たような衣服を着た少年少女が通う場所。学校。
 今日判明したマスターはそこの生徒であるという。そしてそんな夜遅くまで残っている事から、その少年というのも同じくその学校の生徒だろう。
 ならば敵マスターの取るべき行動としては存在の消去ではなく、記憶の操作を行う方が理に適っている。

 バゼット自身も戦闘に特化した魔術師であるから、細々とした魔術行使は得意ではなかった。だが相手のマスターについては些か心当たりがあり、その人物くらいの力量なら記憶の操作など造作もないだろう。
 その人物。そして学校に張られている結界。その消去、あるいは妨害を行ったアーチャーと思われるサーヴァントのマスター。

「とりあえず……アーチャーのマスターですが、おそらくは冬木の管理者セカンドオーナーでしょう」

 “始まりの御三家”と呼ばれるこの聖杯戦争の発端たる三家に連なる者の一。
 そしてこの冬木市の管理を任されている地主たる魔術師の家系。

 遠坂の現後継者────“遠坂凛”

 彼女なら必ずこの戦いへも参加するだろうし、年代的にも一致。顔を合わせた事はないが力量も極めて高いと聞く。
 アーチャーのマスターが彼女であるのはほぼ間違いないだろう。

「ランサー……一つ、お願いがあります」

 もし彼女なら、一つだけどうしても気にかかる事がある。

「あん?」

「その少年の行方を追ってきてもらえませんか?」

 訝しげな表情をするランサー。
 それもそうだろう。間もなく幕を開く聖杯戦争の最中、自分の見逃した一般人の少年の行方を追って来いなどと。理由を聞かなければそんな無駄な行動は取れない。

「これは噂に聞いた程度なのですが……。
 遠坂に連なる者は遺伝的な呪いを受け継いでいるらしいのです」

「は? それが一体あの坊主と何の関係があるんだ?」

「曰く、『ここ一番で致命的なポカを犯す』とか……」

 沈黙。
 強い風に揺れる窓の音だけが、室内に木霊する。

「じゃあ……何か。あのお嬢ちゃんがそのトオサカってのだとして。坊主の記憶操作をせずに立ち去った可能性がある……てか?」

 それにこくりと頷くバゼット。

「なんだそりゃ。笑うに笑えねえ」

 呆れたような表情で天を仰ぐランサー。
 バゼットとてそんな噂は信じたくはないが、不確定要素を残しておくのは巧くない。不安の芽は出来る限り摘んでおきたいのだ。

「ま、しゃあねえか。自分の蒔いた種だからな。
 んで? もし坊主が記憶を残していたらどうすんだ?」

 ランサーの言葉にバゼットは顔を顰める。
 一般人への被害はなるべくなら出したくはないという考えは今も変わっていない。しかし自分は魔術協会に所属する封印指定の執行者。魔術協会の期待と規律を背負う者として、神秘の漏洩は確実に防がなければならない事由であり……

「それは……………」

 天秤にかける必要などなかった。







 拠点を後に、再度街を駆ける。
 既に街に人気は少なく、灯りも消え、闇に没している。

「あー、今更気づいたんだが、どうやって記憶の有り無しを見分ければいいんだ?
 ……………ま、行けばなんとかなるか」

 独り呟いて、新都と深山町を繋ぐ大橋を渡り、更に奥へ。探索(ベルカナ)のルーンを頼りに、道を走り、塀を飛び越え、屋根を駆ける。
 程なくしてルーンの示した場所へと辿り着く。

 眼前数十メートル先にある大きな屋敷。
 日本特有の造りで建てられた武家屋敷が、探査のルーンが導き出した目的地だった。

「…………あん?」

 屋敷には既に灯りはない。家主は寝ている可能性もあるが、それを否定する材料がある。
 気配。
 屋敷の中に手合わせをしたことがある者の気配を鋭く感じ取った。

「────サーヴァント」

 おそらくはアーチャー。
 何故ヤツがここにいるのか。それは定かではないが、敵意を剥き出しにし、誰かに刃を突きつけていることがこの距離からでも肌がヒシヒシと感じている。
 そしてその一瞬後。

 ────閃光。

 闇夜を染める強烈な光。眩い輝きと共に魔力が奔流となって吹き荒れ、徐々にその力を収束していく。
 その様は、自らと存在を同じくする者が喚び出された証。

「────……っ、七人目だと……!?」







 この夜を以って、七名の魔術師と七騎のサーヴァントは揃い踏む。
 光は始まりの鐘となって、火蓋を切る。
 止まる事無く廻り続ける歯車は、誰に知られる事もなく、既に狂い始めている。













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